この世で一番恐ろしいのは、幽霊なんかやない。
長いこと介護職をやっててそう想う。
一番恐ろしいのは「絶望」や。
救いのない人生でさえ「もしかしたら・・・」「もしかしたら・・・・」と人は考える。
癌で余命を宣告されて終末の人でさえ「医学が発達して 明日新薬が出て助かるかも・・・」って考える。
私らヘルパーは所謂「看取り」や。
せやから一時間のサービスで 自分ができる限りの中で入居者さんがほんの少しでも快適に過ごせるようにお手伝いしてるんや。
あと何回この人の、爪を切ってあげれるんやろう?
あと何回 この人を笑わせることができるんやろう?
あと何回・・・・・
そう想って仕事してる。
ある日気がついたら鏡の中の自分は知らん人みたいに歳老いてて
立つことさえ出来ん身体になってたり、
家族や兄弟 友達さえ死んでおらんようなって
たった一人取り残された人の気持ちを考えたことがあるか?
自分の便にまみれて寝かされてほっとかれる
選択の余地もない食べ物をめったやたらに急かされて口にほおりこまれる人の気持ちを?
なんで呆けるかって?
呆けな気が狂うからやんか。
なんで同じことばっかり言うかって?
それが それだけが気になるからやんか。
頑なな年寄りって言うけど、それは頑なにならな自分の心を守られへん程傷ついて来たからやんか。
不安がどれほど怖いものか。
私にはもう辛いほど身にしみる。
「汚い」や「臭い」や そんな事自分が一番判ってる。
そんな言葉をヘルパーが使うなんて、それは「暴力」や。
毎日 暴力を受けてたら無気力になる。
それが続くと絶望に変わるねん。
自分で命を絶つ力さえ残ってなくて、いつ終わるんか判らん地獄や。
便にまみれてなんぼの商売。
そう思われへんねんやったらヘルパーなんかせんといて欲しい。
たいがいの事では怒りを感じひん位、私も今までひどい事してたけど、
弱いものをいじめるヤツは許せん。
怒るん見たことないっていつも言われる。
そうや私は人を批判出来るようなタマやない。
けどな、見過ごすわけにはいかんねん。
非力な者に暴力を振るう それだけはあかん。
ヘルパーに限らずや。
なんで子供の兵隊が銃を持つねん?
なんで戦争がなくならんねん?
なんで核を売りに今 このタイミングで行けるねん?
なんでやねん?
どいつも こいつも ほんまにおかしいねん。
くそっ!
恥を知れ!
ま、話が逸れて行ったけど。
そういう事。